こんにちは。
道産子作業療法士のゆうです。
セラピストの仕事をしていると、排尿に関わるお悩みを聞くことは少なくないと思います。
例えば、以下のようなお悩みを聞きます。
夜もおしっこが近くて、何度も起きてしまうの。
日中も何度も行ってしまうから、普段も出来るだけ水を飲まないようにしている。
おしっこがしたいって思わないの。いつの間にか出ちゃって、看護師さんにオムツを取り替えてもらっている。
おしっこを出しても、チョロチョロしか出ない。
全部出たと思っても、残尿感を感じる時もある。
おしっこしたいって思って、トイレ行くんだけど間に合わないことが多くて。
上記は一部の例です。
どれも排尿に関わるお悩みですが、それぞれ原因が異なる状態です。
医師は診断を行いますが、看護師やリハビリスタッフも、本人やご家族の協力を得ながら、排尿のアセスメントを行い担当医に報告することもあります。
また、排尿の自立度は患者さんが最後の人生をどの場所で過ごせるかにも重要な項目となります。
回復期病棟で働いた経験がある方なら、トイレが自立できるか出来ないかで退院率が変わってくるのは経験していると思います。
この記事では排尿障害のタイプを確認しながら、作業療法士が知っておいた方が良いと思うアセスメント項目をお伝えします。
排尿障害
排尿障害のタイプは大きく分けて以下の3つに分けられます。
上記の通りです。
どのタイプも身体・精神的だけでなく、日常生活にも影響を及ぼしてしまいます。
出過ぎて困る(回数が多い)タイプ
尿が漏れてしまう(失禁)タイプ
動作に時間がかかる場合や我慢しすぎるパターンもある。
出なくて困る(排尿困難)タイプ
失禁
老年者が尿失禁を起こしやすい背景
①老化に伴う身体機能の低下
②複数の疾患をもっていること
③薬物服用や手術など治療に伴う影響
尿失禁の身体面への影響
①尿漏れによる不快感・感覚鈍麻
②皮膚障害(発赤、あせも、褥瘡)
③感染(尿路感染)
④脱水
心理・社会面への影響
①精神的な苦痛の増大
②疾病への回復意欲低下
③介護に対する気兼ね、遠慮、依存など援助者との人間関係悪化
④家族・介護者の負担増加
⑤経済的負担の増加
排尿機能にかかわるアセスメント項目
性別 |
年齢 |
排尿回数・排尿間隔、失禁の回数・間隔 |
排尿量(1回量、1日量) |
尿の出方(勢い、1回の排尿にかかる時間) |
尿意の有無、尿意の自制(可能か不可能か) |
排尿に伴う自覚症状(疼痛、残尿、尿閉) |
尿の性状(混濁、浮遊物) |
尿失禁の状況(時間的特徴:1日中or夜間集中など) |
尿失禁をもつ老年者に対するアセスメント項目【排泄行動・排泄環境】
尿失禁をもつ老年者に対するアセスメント項目は大きく4つに分けて行っていました。
②運動能力
③言語能力
④排泄環境
一つずつ確認していきます。
✔認知能力
知的障害の有無は大事な要素となります。
【認知能力を低下させる疾患】
認知症、意識障害、情緒障害など
【認知能力を低下させる病態・因子】
全身状態の低下、視力障碍、知覚障害、失認、失行、見当識障害、不安、緊張、怒りなど
【判断力・適応能力】
環境(場所)、排泄用具、排泄方法の理解
などが認知能力の項目としてアセスメントしていきます。
✔運動能力
【運動機能を低下させる疾患】
脳血管疾患、脊髄疾患、神経・筋疾患、骨折など
【運動機能を低下させる病態】
意識障害、発熱、痔痛など
【床上での運動】
寝返り、腰の上げ下げ
【基本動作】
起き上がり、座位保持、立ち上がり、立位保持、着座
【移動能力】
歩行、ベッド⇔車椅子への移乗
【排泄行動に伴う自立度】
下衣の上げ下げ、排泄後の始末(拭く、水洗レバー・ボタンが押せる)、手洗い、ドアの開閉、トイレまでの移動、床上で尿器・便器が使用できる
などが運動項目としてアセスメントしていきます。
✔言語能力
言語能力は介護者の援助が必要な場合には特に必要となってくるアセスメント項目です。
【言語能力を低下させる疾患や病態】
失語、構音障害、義歯の嚙み合わせなど
【排尿の訴え】
訴えの有無、タイミング
【表現方法】
言語、表情の変化、ジェスチャー(サイン)など
【排尿に伴う随伴行動】
オムツや下衣を外す、徘徊、落ち着きのなさ
などが言語能力としてアセスメントしていきます。
✔排泄環境
【生活習慣】
食事・飲水、運動、睡眠、排泄、更衣
【排泄用具】
トイレ、ポータブルトイレ、尿器
【排泄の場】
距離・移動時の障害物、彩光、プライバシー
【排泄に伴う移動】
歩行(杖無し、杖、歩行器)、移動時の履き物
【必要時に援助が受けられるか】
ナースコールがあるか、人的資源は不足していないか
【衣服、下着】
種類、型、機能性(保温・保湿)
【衣類・下着の管理】
常時必要な枚数があるか、洗濯の頻度、尿失禁に伴う資源の活用(おむつ、尿取りパッド、安楽尿器、防水シーツなどの活用
などを排泄環境としてアセスメントしていきます。
排尿の自立度で本人の人生は大きく変わる可能性がある。
僕は失禁による心理・社会面の影響は特に大きいと感じます。
病院職員であれば、排泄ケアは慣れているかもしれませんが、本人や家族は精神的な苦痛を感じる可能性が十分あります。
本人が「家族にはオムツ交換をしてほしくない」という方もいますし、
家族が「家族でもオムツ交換はしたくない」という人もいます。
出来るだけ、本人や家族に負担がないように色々な方向からのアセスメントを行い、相談しながら提案していくことが大事だと思います。
排尿が自立もしくは可能な援助方法を提案することが出来れば、最後まで自宅での生活を送れる可能性もあるし、家族・友人と笑顔で過ごせる時間が多くなると思います。
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