こんにちは。
作業療法士のゆうです。
今までとても仲の良かった家族でも、認知症の家族の方を介護していると、家族の方はが徐々に疲労し、今までは気にならなかった些細なことでも苛立ちを感じたり、気持ちが落ち込んだりしている家族の方を多く見かけてきました。
病院の中でも自宅での生活でも、認知症の症状を理解し、上手く対応出来なければ、家族だけでなく、専門職の方でも苦労を要することがしばしばあります。
すでに認知症の家族を介護し、限界を感じている人は「一人で悩みを抱え込まず」早い段階でまずは専用窓口に相談しましょう。
家族の方を何らかのサービスに頼るのは何も恥じることはありません。
認知症による「徘徊」という症状
徘徊とは「歩き回る」行動のことを言います。
家の中を歩き回ったり、外を歩き回ったりする様子がみられます。
特に「目が離れた時に外で徘徊する」行為は本人や家族にとって、とても怖いことだと思います。
迷子になって連絡もとれず、交通事故や怪我など多くの危険性が伴います。
夏場では脱水症状、冬場では低体温症など季節によっては心配する出来事が増えてしまいます。
徘徊している人がしっかりと歩けたり、簡単なやり取りが出来る方ならば、その人は他人からみれば「何も問題がない人」にみえてしまい、発見も遅れがちです。
そのため、徘徊する人は介護する人にとって「目が離せない存在」となり、「常に介護が必要」となってしまいやすいです。
徘徊が起きる原因を理解し、出来るだけ徘徊を防止していくことが大切です。
②目的なしに徘徊している。
順番に解説していきます。
①目的があって徘徊している
徘徊は本人が「どんな目的があって徘徊をしているのか?」を理解することが大切と言われています。
徘徊している理由が分かれば対策を立てることが可能になるからです。
・覚えていない人と一緒にいると、「家族に会いたい」と探しに行こうとする。
・トイレに行きたい(場所を覚えていない)と家の中をウロウロ歩く。
・服やオムツが汚れたから「着替えたい」と服を探し回る。
・服や部屋を汚してしまい怒られた経験から「怒られるのが怖くて逃げたい」と落ち着く場所を探そうと歩き回る。
・財布を置いた場所を忘れ、「財布がない」と探し回る。
・買い物や仕事、学校に行くなど「外出」しようとする。
②目的なしに徘徊している
徘徊も目的なしに徘徊している場合があります。目的が分からないと、徘徊の対策が困難になることもあります。
徘徊が始まった時は「トイレに行きたい」など、目的がある行動だったかもしれませんが、記憶力低下が強くなると、介護者が徘徊に気付いた時には「トイレに行こうとしていたことを忘れる」など、目的を忘れ、無目的となった状態でそのまま歩き続けてしまう方もいます。
徘徊している方への望ましい対応
徘徊が始まると、目的を達成するあるいは注意を他に向けることが出来るまでは歩き続けてしまう可能性が高いです。
徘徊している理由が「財布がないから探している(置いた場所を忘れた)」など目的が分かる場合は対策が立てやすいです。しかし、無目的の場合は徘徊を止めることが難しいこともありますが、出来るだけ徘徊を止めてもらうために、大事なポイントをお伝えします。
✔徘徊している人を怒らない!
「何度言っても、何度教えても」、「同じことが繰り返される」、認知症の繰り返される徘徊に介護者も苛立ちを感じやすいです。
徘徊は不安や恐怖などがきっかけに行動が始まりやすいです。
徘徊している人は怒られても「何で怒られているかの理解も乏しくなっている」こともあります。
そのため、怒られることによって不安や恐怖が強くなり、徘徊を悪化させることがあります。
早く徘徊を中断させたいなら、徘徊中には関りの中で「怒らない!」がポイントになります。
✔理由を尋ねて、寄り添う気持ちで関わる
理由を尋ねて、目的が分かれば答えてあげることで安心してもらうことが可能な場合もあります。
しかし、徘徊している本人も分からなくなったりしていることも多いので、徘徊している理由が答えられなくなっている場合があります。
それでも、色々会話をしていると、徘徊している理由のヒントになったり、不安が軽減され落ち着いてくることがあります。
✔徘徊をやめさせない!他に注意を向ける
徘徊をやめさせようとすると、不安が増強する場合があります。
例えば「家の家に帰りたい」という方を例にみてみましょう。
介護者:「今日は家に帰れないよ、ここに泊まるんだよ。」
本人は帰りたいのに、帰れないってことで不安が強くなります。
介護者:「お茶とお菓子を用意したので、せっかくなのでテーブルで一緒に食べませんか?」
、「編み物(本人が以前にやっていたこと)始めたんですが、ちょっと教えていただけませんか?」、「向こうでみんなでレクリエーションやっているんですが、一緒に見に行きませんか?」
などと、声をかけてみる。
本人の気持ちを否定することなく、何か別に注意を向けることが出来ると落ち着くことがあります。
徘徊による迷子を防止する方法
徘徊が生じるようになると、介護者の心配事や負担が増えてきます。
②環境を整えていく
順番に解説していきます。
本人の習慣を見直していく
本人の一日の習慣を見直していくことが大切になります。
見直したい習慣は基本的な生活リズムです、①食事や②睡眠、③運動です。
①食事でしっかりと栄養を取れていることは、脳の機能を発揮する上で大切です。
また、食欲低下があり、食事が進まない人では、一人で食事をしていると食事摂取が不十分になりやすいですが、家族と食べると食事量が増える場合もあります。
②睡眠のリズムを整えることはとても大切です。徘徊の見守りが日中であれば苦痛がない人もいますが、夜間に徘徊が起こると、家族も睡眠不足になりやすく、疲労がたまりやすくなります。出来るだけ日中は起きているようにしましょう。
③適度な運動は認知症の進行予防にも効果的です。不安から注意をそらしたり、睡眠を深めてくれる効果も期待できるので、簡単なラジオ体操なども良いと思います。(フラツキ強い場合はイスでの運動)
環境を整えていく
環境を整えていくことは本人の行動を変えるより短時間で効果がみられます。
家の中を整える
家の中が片付いていないと、色々なところに注意を向けなくてはいけなくなります。
「探し物を見つけられない」、「探し物をしている最中に何をしようとしたか忘れた」。ということに繋がりやすくなります。
余計な荷物を捨てて、家の中をシンプルにしておくことが大切です。転倒予防にも繋がります。
分かりやすく、大きな目印をつける
よく使う物、探しそうとする物は決まったところに置いておくようにします。
トイレなどを探そうとして、家の中で迷子になる場合にも目印をつけておくことで有効になることもあります。
夜中(寝起き)の対策
寝ている時は介護者も安心して、やっと一人の時間。寝ている時間もずっと見守っている訳にはいきません。
でも、いつ起きるか分からないと不安が。。。
そんな時は起きたことを知らせてくれる、離床センサーがおススメです。病院でもセンサーは対策として使われます。
玄関から外に出れないように工夫する
24時間対応は困難です。
介護者が寝ている時やトイレ、お風呂、調理中などに目が離れる場合が必ずあります。
そのような時には玄関や窓から出られない工夫が必要です。
①鍵を取り替えたりして、ドアを開けられないようにする。
②手の届かない箇所に、新たに鍵を設置する。
③大きな荷物を置き、ドアの前を塞いでおく。
④玄関を開けた際に 、アラームで知らせてくれるような工夫をしておく。
玄関に鍵をかけていると、「閉じ込められている」という気持ちになってしまう人もいます。
貼り紙で「故障中」などと貼っておくことで、心的負担を軽減出来ている人もいます。
万が一、一人で外に出てしまった時の迷子防止
基本的には一人で外出して迷子になる前に防止しておきたいものです。
それでも、外に出る可能性が必ずあります。外に出てしまっても、出来るだけ早く発見できるような工夫も合わせてしておくことで迷子防止の可能性が高くなります。
②近所の方の協力に求めたり、自治体のサービスを利用する。
地域包括支援センターや、民生委員、交番などにもあらかじめ周知しておくと、外で見かけた場合に家族に連絡が来るようにすることが出来ます。
③GPSを服に取り付けておく。
それよりも、まずは一人で徘徊しないように注意しておくことが大切です。
他にもこんな症状が出たら、認知症かも
認知症と言っても、今回紹介した「徘徊」や一般的に知られる「物忘れ」だけではなく、多様な症状があります。
・日付を間違える、約束を忘れる、薬を飲み忘れる
・不必要な同じ買い物が多い
・よく物を無くす
・買い物の支払いが分からなくなり、お札での支払いが多い
・趣味をやめたり、友人付き合いが悪くなった、ご近所トラブルが増えた
・怒りっぽくなったり、泣きっぽくなる
認知症の症状の一例です。何となく「雰囲気や様子が変わってきたな」って感じたら、すでに認知症が始まってきているサインかもしれません。
家族の方にも、専門職の方にも良い本です。
最後に
認知症に限らず介護は大変です。
冒頭でも、お伝えしましたが、限界を感じている人は「一人で悩みを抱え込まず」早い段階で専用窓口に相談してみましょう。
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