高次脳機能障害って何?
『高次脳機能』とは、知覚、記憶、学習、思考、判断などの認知過程と行為の感情(情動)を含めた精神(心理)機能を総称する。脳血管障害や事故(脳外傷)など何らかの病気によって脳が損傷されたために、認知機能に障害が起きた状態を高次脳機能障害という。
高次脳機能障害の種類とその症状、具体的な対策まで
高機能機能障害の症状は様々で、症状によって対策方法がことなります。主な症状には、以下のようなものがあります。
注意障害
注意障害とは集中力が低下し、一つのことに注意を向け続けることや注意の対象を切り替えることが困難になります。
例えば、
①落ち着きがなくなってしまう。
②ぼんやりして、周囲の声に気が付きにくくなる。
③一つのことに没頭しすぎて、同時並行で作業することが困難になる
などの症状がみられます。
【具体的な対策】
①環境を整える
・静かで整理整頓した場所で活動する。
・注意事項は紙に書いて、目につく場所に貼っておく。
②集中して活動するためには
・一度に多くの作業を行わず、一つ一つの行う。
・集中する時間を少しづつ延ばしていく。
・好きなこと・興味のあることをみつける。
・単純作業から少しずつ難易度をあげていく。
記憶障害
記憶障害とは病気や事故の前に経験したことが覚えられなかったり、新しい経験や情報を覚えられなくなった状態をいいます。
例えば、
①新しいことを覚えられない。
②何度も同じことを質問する。
③やろうとしたことを忘れてしまう。
④昔の出来事や経験を覚えておらず、活用できない。
⑤過去の誤りに気付かないでトラブルになる。
⑥日付や場所が分からなくなる。
などの症状がみられます。
【具体的な対策】
①環境を整える。
・行動を習慣化して、決まった通りの行動をするようにする。
・いつも使うものは決まった場所に置くようにする。
②記憶の代償手段をつくる。
・ノートやカレンダー、ホワイトボードにメモをつける。
・行動の開始を助ける手段として、アラーム、タイマーをセットしておく。
・スケジュール帳を使用する。
③新しいことを覚えるために
・多くの作業を行わずに一つ一つ繰り返し覚えるようにする。
・目で見る、耳で聞く、など得意な記憶方法をみつけて、利用する。
遂行機能障害
遂行(実行)機能とは「目標達成のために適切な構えを維持する能力」のことをいいます。具体的には①目標設定、②計画立案、③計画実行、④効果的遂行などの要素から成り立っており、障害を持つと論理的に物事を考え、計画し、問題を解決し、そして行動することが出来ない状態をいいます。
例えば、
①自分で計画を立てられない
②人から指示してもらう必要がある
③物事の優先順位をつけられない
④行き当たりばったりの行動をする
⑤間違いを次に活かせない
などの症状がみられます。
【具体的な対策】
①環境を整える
行うべき行動が目に見えるように張り出しておく。
②代償手段を利用する。
具体的に書かれた作業手順を目に見えるところに置いておく。
③これからの作業、途中作業、終わった作業を確認する習慣をつけていく。
④時間的な余裕を与え、最初は具体的な指示を与えていく。
社会的行動障害
社会的行動障害とは、場面や状況に合わせて感情や行動を適切にコントロールすることが出来ない状態をいいます。コミュニケーション能力や意欲が低下し、固執・依存・退行・抑うつなどの行動や状態がみられます。
例えば、
①すぐにイライラしたり、泣いたり、笑ったり、感情のコントロールが出来ない。
②態度や行動が子供っぽくなる。
③欲求が抑えられず、無駄遣いが増える
④やる気が出ないようにみえる
などの症状がみられます。
【具体的な対策】
①感情コントロールがしにくい方に対して
・イライラしたら、その場から立ち去る
・気分を切り替えるきっかけを作る
・リラックス出来たり、楽しいことを用意する
・行動を振り返る
・良いところは褒める。社会的に許されないことは禁止する。
・担当主治医に相談する
②依存したり、退行しやすい方に対して
・上手くできた時は褒める
・実現可能な目標から達成感を積み上げていく
・何に依存したり、退行した行動をしやすいか把握していく
③欲求が抑えられない方に対して
・何に対して欲求が抑えられなくなるか把握する
・家計簿や小遣い帳をつけ、振り返りの習慣をつける
・衝動的行動がなぜダメなのか一緒に考え、具体策を考える
④一日中ボーっとしているような方に対して
・『やる気だして』、『何でだらだらしているの?』と言わない。本人の自尊心を傷つけないようにする。
・出来そうな課題から順次提示してみる
・目標を立てて、やる気を促す
まとめ
高次脳機能障害は理解が必要です。最初は『どうしてそんなことするの?』、『分かってくれないの?』と思うことが多いかもしれません。
少しでも理解してあげることで、より寄り添えるきっかけが作れるかもしれません。
主治医の先生とよく相談しながら、寄り添うことが大切になると思います。
参考文献
・『CLINICAL REHABILITATION』別冊 高次脳機能障害のリハビリテーション
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